――そのまなざしの先には、水底のカツオ。
mizuwo、カツオ漁船の将来を担う男。
いまでは彼の釣りあげたカツオは、海外でも高い評価を受ける。
これは彼が最初にカツオを釣り上げるまでの記録だ。
みんなで釣りがしたい。
密着取材を始めたのは、彼が最初にカツオを釣り上げる1年前のことだった。
mizuwoはカツオを釣り上げる準備のため、アステルリーズ雇用局に入った。
この雇用局でカツオを釣り上げる仲間を集めるためだった。mizuwoは夢を語る。
チームメンバーがまだ3人のこのとき夢が現実になることは、まだ知らない。
そう言ってmizuwoは、カツオを釣り上げるための身体作りをするために、ゴブリンを絶滅させにいった。
カツオのためなら土下座だってするさ。
この日、アステルリーズ雇用局では、対カツオ強化合宿のためラッシュバトルに向かう予定だった。
しかし、思わぬトラブルに見舞われる。
バトルスコア780必要だが、それに満たない者がいる。
チームの空気が凍り付いた。
犯人捜しをし始める局長。そこにmizuwoが動いた。
犯人は誰だかわからなかったが、すべてはカツオを釣るため。その思いが彼を動かしたのだった。
海水温の異常や台風に見舞われ、恐るべき不漁を記録した2014年の困難に比べれば、局長に頭を下げることなど苦ではなかった。
やさしい笑顔の裏の覚悟に取材班は度肝を抜かれた。
犯人がだれかは、全員知っていた。
魚と対話をしろ。
半年後、再び取材に訪れようとmizuwoに連絡を取った。
カツオを釣るため、身体作りを継続していた。カツオへの執念は本物だった。
少し、質問してみた。
――カツオは大型のものは全長1m・体重18〜20kgにもなるということだが、釣ることはできるのか?
――筋肉を過信しすぎではないか?
筋肉を鍛え続けたmizuwoに疑いなど持つはずがなかった。
カツオを釣り上げるのに必要なものは、筋肉だと。
それでもやはり必要なものがあると、若き天才は語る。
魚と対話をする。これが天才の導き出した解だった。
魚と直接会話をすることは可能だろうか。
もちろん、できない。
だが、カツオが釣り竿にかかった瞬間、人とカツオが繋がる。
そこで筋肉だ。
mizuwoの筋肉とカツオの筋肉の対話。これがカツオを釣るための秘策となる。
メンバーが増えてきた今年の夏、mizuwoの夢が叶おうとしていた――。
決戦
みんなで釣りをしたい。あれからどれくらい経っただろうか。
mizuwoは、笑顔でチームメイトたちと夢の舞台に立っていた。
高校3年生のmizuwoにとっては今年が最後の夏。フィッシング部主将としてチームを引っ張ってきた。
決勝戦は「アステルリーズ雇用局付属高校」対「マグナカツオ水産高校」。
港の水際でアステルリーズ雇用局付属高校のメンバーたちとマグナカツオ水産高校のカツオたちが試合前に互いに握手をする。
mizuwoの頭には、今までの記憶がよみがえっていた。
死に物狂いでゴブリンを狩りつくした去年の夏。
冬季合宿で凍ったプロテイン――。
ここでカツオを釣り上げれば、長年の夢が叶う。
ただ、あの頃から夢がひとつ、増えていた。
決勝戦でカツオを釣り上げて、仲間たちを全国に連れていく――。
孤独だった若き天才は、今日も円陣を組んでメンバーたちに気合を吹き込む。
試合開始のホイッスルが鳴り響き、海面が揺れた――。
ご愛読ありがとうございました。ひろこ先生の次回作にご期待ください。
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