【ブルプロ】VA(ヴァリアントアリーナ)クリアしました!

絶望と反魂と滅殺の決断は、本題に入る前に自然な前置きから入るのが常だった。

 

この日も、絶望と反魂と滅殺の決断の自然な前置きからチャットが始まった。

 

 

この単純な問いに対して、側にいたランプちゃんの頭脳はきわめて長大な答えを導き出し、北斗百裂拳を打ち込むかのごとくキーボードを叩き始めた。

 

 

とどめの一発がエンターキーを弾き飛ばし、ランプちゃんの答えが表示された。

 

 

 

 

 

1+1の答えを見つけるため、世紀末の暴力が支配する弱肉強食の世界に旅にでたランプちゃんを尻目に、絶望と反魂と滅殺の決断は自然に本題へと入ろうとしていた。

 

 

 

VA、それは6人パーティ限定の高難易度ミッション。

 

2024年7月19日当時、雇用局単独ではまだクリアができていなかった。

 

 

先ほどの絶望と反魂と滅殺の決断の前置きはあまりにも自然な導入だったため解説するだけ野暮というものだが、これはVAが6人限定パーティというところにひっかけているものだった。

 

つまりVAは1人では挑戦することができず、VAに挑戦するためにはパーティメンバー数が1+1+1+1+1+1=3ミソスープでなければならないということを言いたいがために、あの前置きがあったのだ。

 

そんなド自然な会話の展開に関心していたひろこもVAの練習の提案に賛同する。

 

 

 

もともとぶっつけ本番でVAをやる予定ではあったが、絶なんたらの血がうずいたことで本番の前日に練習をしたいということだった。

 

たべいち主導のひろこ育成計画もあり、このときのひろこはそれまでとは比べ物にならないほどにパワーアップしていた。

 

他の局員も捕まえて今夜21時からVA練習を時間厳守ですることをきめて一度解散した。

 

今夜、雇用局の伝説が始まろうとしていた。

 


夏の全国VA大会前練習試合

この日、アステルリーズ雇用局付属高校VA部の夏の大会前最後の練習試合が始まろうとしていた。

 

かつてはVA常勝高校だったアステルリーズ雇用局付属高校だが、ブログニウム依存症だったVA部員による大量の違法ブログの摂取が発覚し、大会への出場停止処分を受けたため、今ではかつての栄光を失ってしまっていた。

 

そんなアステルリーズ雇用局付属高校の名誉と誇りを取り戻すための戦いでもあるVAに、今年三年生で最後の夏となるひろこは強い責任感を抱いていた。

 

練習試合には試合に参加する選手しかベンチに入ることは許されないため、VA部マネージャーのでそに出発することを告げる。

 

 

 

 

時間になり、参加選手のパーティが組まれミーティングが始まる。

 

いつもならくだらない会話を始めるチャット欄も、このときは誰もが真剣にVAの打ち合わせをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が自分の役割を確認し、成すべきことを理解したところで試合前のメンバー表を相手チームと交換しようとしたところで、ひろこがみんなの方を振り向いた。

 

 

ひろこが申し訳なさそうに口を開く。

 

 

 

準備は完了しているはずなのに、ミッションが始まらない。

 

 

たべいちはひろこ育成計画を達成していれば勇猛SPG6の値が150になっているはずのひろこの三つ葉のEイマジンを剥ぎ取った。

 

 

攻撃力アップ150がついているはずもなく、70だった。

 

 

たべいちはひろこが想定と異なるイマジンを持っていることに驚いた。

 

その後もボディーチェックが続けられ、ひろこのイマジンの状態が続々と明らかになった。

 

 

 

 

 

 

ひろこは育成計画を達成していると思っていた。

 

だが、実際には計画を達成していなかった。

 

少し考えたところひろこには、この勘違いが起きた原因となる出来事に思い当たる節があった。

 

それは、数日前のVA部監督あまにゅんとの会話だった。

 

 

 

育成計画を進めていたひろこだったが、それでも監督命令は絶対だ。

 

当然VAに必要なものであるからひろこ自身も精鋭騎士団員をつくることはやぶさかではなかった。

 

問題は、ひろこの記憶領域だった。

 

 

精鋭騎士団員をつくるということを頭に入れたことで、ひろこ育成計画のことは上書きされてしまったのだ。

 

その後精鋭騎士団員の作成を迅速に達成し、あまにゅん監督からの絶大な信頼を獲得した。

 

 

なお、代替チケットを使っていたせいでフルボッコにされるのはまた別の話。

 

 

ひろこの中では精鋭騎士団員を作ったことでひろこ育成計画も達成したことになっていた。

 

すべてを理解したひろこは冷静だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどまでVAへの挑戦に燃え上がっていた雇用局3ミソスープは、残業帰りの夫のために嫁が食卓に用意してくれていた味噌汁のように冷めきっていた。

 

 

みんなとの約束を果たせなかったひろこは、みんなに顔向けができなかった。

 

 

それでもアステルリーズ雇用局付属高校VA部のモットーは「みんなはひとりのために、みんなはひとりのために」だった。

 

みんなで一緒にひろこのイマジンを集めよう!という話に

 

 

 

ならなかった。

 

こうして、ひろこの高校三年生最後の夏が終わった。

 

 


アステルリーズ雇用局付属高校卒業式

ひろこがVA部の練習から外された後、本番でのスタメン入りも当然許されなかった。

 

結局一部のメンバーはVAをクリアしたようだったが、VA部としてはVAのクリアを果たせずにそのまま卒業式の日を迎えてしまった。

 

晴れ渡る空に祝福された生徒たちが正門前の桜並木を行き交っていた。

 

 

肩パッドをつけたあかねが卒業証書の筒を火炎放射器に見立てて構えている横で、ひろこはでそにこう誓った。

 

 

本当なら、三年生のひろこはでそと一緒に卒業する予定だった。

 

それでもこの高校でVAというやり残したことがある以上、留年の道を選択することに迷いはなかった。

 

屈辱を味わったあの日、でそにガムテープでケツ毛を抜かれ、ひろこのケツには火が付いた。

 

必ず、VAをクリアしてやるというケツイをケツ毛に誓って、ケツをでそに見せた。

 

 

ひろこのケツイとは裏腹に、VA部メンバーが多数卒業したこの日、3ミソ以下となったVA部は廃部となった。

  


留年後の挫折

留年して2回目の三年生を迎えたひろこ。

 

しかし、クラス中にひろこはケツ毛をそらない信仰をもっているという噂が広まったせいでひろこは新しいクラスに馴染めず、終いにはケツ画像をクラス中に拡散されてしまっていた。

 

 

だが、それ以上にVA部の廃部がひろこの心に与えた衝撃は大きく、不登校となっていた。

  

何をするにもやる気のでないひろこは家に帰るのもやめ、狭く暗い路地裏に住み着いていた。

 

 

VAにいけなくなり、一体何のために留年したのかわからなくなったひろこは、毎日涙を流していた。

 

 

そんなときだった。

 

 

クラスメイトのまがちゃま(raは母国のアレで発音しないらしい)だった。

 

捨てられているひろこがこのままでは保健所で殺処分されてしまうかもしれないと憐れんだまがちゃまは、ひろこを抱きかかえて持って帰ることにした。

 

安心したのか、ひろこも尻をゆるめた。

 

 

まがちゃまは鼻をぐちゃぐちゃに歪ませて言った。

 

 

 

そして、この出会いがVA攻略をしたかったひろこに新たな希望をともすことになる。

 

そう、まがちゃまは相撲部キャプテンだったのだ。


相撲部

まがちゃまに今年からできた相撲部に入部させられ、地獄の稽古の日々が始まっていた。

 

 

ひろこの稽古相手は元VA部のたべいちだった。

 

去年二年生だったころは健康体だったたべいちだが、ブログニウム依存症による過食で肉付+10になるまで太った結果、まがちゃまの相撲部にスカウトされていた。

 

 

たべいちとひろこの体がぶつかり合う。

 

 

 

ブログを出せというたべいちの圧に対して、ひろこも相撲の八十二種の技の一つを繰り出す。

 

 

自分のブログを相手が受け取ろうとしたところをブログを引いて相手の体勢を崩す特殊技だ。

 

 

明らかにブログに釣られ、体勢が崩れていたはずだったにも関わらず、たべいちはひろこの腕ごとブログを両手で抱え、ブログを開いてひろこをねじり倒した。

 

 

 

決まり手は「ブログとったり」だった。

 

 

こうした稽古を日々重ねていく中で、ひろこはみるみるうちに成長した。

 

そして、ひろこはまがちゃまとやっている相撲とVAの動きに共通点があることに気が付いていた。

 

それだけではない、本来相撲の技に「ブログとったり」という技はないはずなのだ。

 

ひろこのなかの様々な気づきが、まがちゃまにやらされているものが本来の相撲ではないという確信に変わっていった。

 

そうだ、これは相撲を基にしたVA特化の新しい武道――――。

 

 

まがちゃまは、VAをクリアするためにこの部を立ち上げたのだった。

 

ひろこのこの予想は的中し、まがちゃまの軍配を勝手にぶん回して遊んでいたことで、なぜか未完成だったひろこの斧も完成した。

 

 

そして、新しい仲間たちの出会いもここにはあった。

 

みんなそれぞれ、異名をもっていた。

 

ドラえもんアバリティア論者のしろはなだ。

 

 

ルンバ落としのはてな。

 

 

泣き虫のキタノ。

 

 

人数も3ミソに達し、VA特化の相撲に身を捧げたこの6人ならVAをクリアできる。

 

そんな確信がひろこにはあった。

 

そして高校三年生最後の夏(二度目)、案の定まがちゃまは部員全員にVAに出場することを告げたのだった。

 


二度目の夏

一年ぶりにひろこはVAの舞台に立っていた。

 

あの頃のひろこはもういない。

 

一年の時を経て、生まれ変わったのだ。

 

 

いまでは、肉付+10になるまで肉体づくりにいそしんだ新たな仲間たちもいる。

 

 

相撲部の6人の力士がいま、その巨体をのっしのっしとヴァリアントアリーナに運び込み、最後の戦いが始まった。

 

VAではwaveが1、2、3とわかれており、それぞれトライポッドとアイアンコフィンなどとの乱戦、ドゴルマン2匹、キングゴブリンとキングムークとの戦いが控えていた。

 

この1年間、各waveごとに対策を練り上げ、それぞれのwaveに合わせた特訓を行ってきた。

 

事前に打ち合わせをした通り、wave1ではアイアンコフィンを削りすぎると強化装置の石がでてしまうのでトライポッドを狙い撃ちしていった。

 

あちこち移動するトライポッドを逃がさないようにみんなで固まって叩いていく。

 

トライポッドを倒し、11時方向に湧いた強化装置も全員で全力で破壊。

 

 

wave2では、強化装置が3時方向と9時方向から反時計回りに発生する。

 

デミドラを搭載したたべいちが9時方向の石に向かってサンダーマインを叩き込む。

 

 

他5人は3時方向からドゴルマンと石を殴る。

 

 

ひろことまがちゃまはドゴルマンのワンパン射程圏内を避けながらデスペラードを放っていく。

 

ときおりひろこが倒れてしまったり、自爆ミーンの特攻でごたついたりしつつも、みんなでお互いをカバーして、再び立ち上がる。

 

イマジンのバフも切らさないようにみんなで声を掛け合って、連携を深めて戦っていった。

 

やがてドゴルマンが倒れ、wave2も終わった。

 

 

そしてラストのwave3がはじまり、キングゴブリンとキングムークが現れた。

 

フィアーに注意しながら、ここでも連携して戦い、このまま戦い続けて行けばいずれは相手を倒せそうな雰囲気がでていた。

 

…だが、現実は残酷だった。

 

ひろこはVAの残り時間を確認した。

 

 

俊敏さに欠ける6人はそれを自分たちの質量と攻撃力で補おうという作戦だった。

 

しかし練度不足なのかどう考えてもこの残り時間ではどうしようもなく、パーティ内にもあきらめムードが出始めていた。

 

長い間望んだVAクリアがあと少しのところで失敗しようとしていた。

 

それでも、ひろこはその結末を受け容れられなかった。

 

 

その思いからひろこは、最後の望みに懸けて、キングゴブリンに向けて無言パーティ招待をした。

 

 

 

キングゴブリンがパーティに入ったことで、アリーナの脇にいた審判からタイムがかかり、残り時間のカウントが止まった。

 

 

残り1秒。

 

だがここでのタイムで何かが変わる予感をみんなが感じ始め、パーティ内の6人の肉は震え始めていた。

 

 

キタノにいたっては涙を流していた。

 

 

6時方向から主審が、0時3時9時方向からそれぞれ副審が小走りでやってくる。

 

審判団、ひろこ、キングゴブリンの間で輪をつくって、ひろこが話し始めた。

 

 

さらに、いまやVAのタイムアタックもある時代にいまだに時間制限を設けているVA連盟は従来の因習に縛られていますよね、と早口で付け加えた。

 

しかし、ひろこもここの審判団にいまVA規定をどうにかできるなどと思っているわけではない。

 

そこで、ひろこは審判団にこう提案した。

 

 

ひろこが譲歩したことで審判団の顔も明るくなった。

 

  

 

その提案に審判団は驚きつつも、4人で話し合う。

 

少し揉めているようだったが、VAの結果はひろこ対キングゴブリンの相撲で決めるという見解を審判団が示した。

 

 

しろはなだがキングゴブリンの肩に手をのせて、言った。

 

 

かくして、最後の戦いは相撲で決めることとなった。

 

まだ、おれたちのVAは終わっていない。

 

パーティのみんな(キングゴブリン以外)の心の中に共通の思いが芽生え始めていた。

 

ひろこは服を脱ぎ捨て、ふんどし姿になる。

 

塩をまいて自分のケツをひと叩きしたとき、自分のケツ毛に手が触れ、ひろこはハッとした。

 

 

 

いまや、共に苦難の時代を歩んだケツ毛は誇りですらあった。

 

 

ひろこが物思いにふけっている間にキングゴブリンもふんどし姿になり、行司はまがちゃまが務めることが決まっていた。

 

かつてひろこを拾ってくれて、相撲部にいれてくれたまがちゃまに取組を仕切ってもらえることになり、ひろこは嬉しかった。

 

 

まがちゃまが掛け声をかけ、ひろことキングゴブリンが土俵に腕を下ろして蹲踞の姿勢をとり、両者目を合わせる。

 

 

じっ・・・とお互いに目を見つめ合う。

 

 

焦らすようなまがちゃまの掛け声にこらえきれず、ひろこの顔はじりじりとキングゴブリンに近づいていた。

 

 

 

 

まがちゃまの「のこった!!」の声とほぼ同時にキングゴブリンが嗚咽とともに場外に身を投げた。

 

 

決まり手は「口出し」。

 

恥を捨てて相手に口づけをし、隙ができた相手をそのまま場外まで押し出すという勝ちにこだわった技だが、キングゴブリンは口づけだけで土俵の外にでていってしまった。

 

これに対して相手側ベンチのキングムークコーチが土俵に身を乗り出してきた。

 

 

行司の掛け声よりも先にひろこが技を繰り出していたとして仕切り直しではないかという意味で相手ベンチはビデオ判定を要求した。

 

すぐに行司のまがちゃまは反論した。

 

 

相撲は力士同士の呼吸によって立ち合いが始まり、行司はそれに合わせて掛け声をかけているにすぎない。

 

よってビデオ判定は却下された。

 

 

 

 

 

ひろこは意味のわからない発言をするキングゴブリンを無言で蹴り飛ばした。

 

なにはともあれ、ひろこの勝利が確定した。

 

 

まがちゃまが軍配をひろこの方に掲げて勝利の判定をくだし、VAの決着がついた。

 

ここで、ようやくひろこは念願のVAをクリアすることに成功したのだった。

 

この長い道のりをようやく歩き終えることができたひろこの目には涙がたまっていた。

 

元VA部のみんなの意思を継ぎ、wave3ではあまにゅん監督から指導していただいたパーティ拉致術も土壇場で活躍した。

 

そしてなにより相撲部のみんなとの特訓のおかげで強くなり、最後の取組も白星をつけることができた。

 

 

黒星のついた新人力士のキングゴブリンにカメラをもたせて、みんなで記念の写真撮影をする。

 

力士といえどJKのみんなは撮ってもらった写真を年相応にデコり、思い出に残したのだった。

 

 

VAクリアを誓ったケツ毛も役目を終え、まがちゃまに切ってもらうことになった。

 

 

こうして、ながく続いたひろこのVAのあくなき挑戦と伸びきったケツ毛は終わりを迎えた。


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